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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(新れ)322号 判決 1950年7月13日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は上告人の負担とする。

理由

弁護人黒田代吉の上告趣意第一点について。

しかし、所論食糧管理法が自家消費の為のみにする主要食糧の移動であっても法定の除外事由がない限りこれを処罰すべきものと定めているからといって同法をとらえて憲法二五条の規定に違反するものといえないことは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決、判例集二巻一〇号一二三五頁以下)の趣旨とするところである。又食糧管理法の規定は公共の福祉の為に人の自由を制限するものであることは同法一条の規定に照して明らかなところである。そして憲法一三条は生命自由幸福追求の権利は公共の福祉に反しない限度において国政の上で尊重されなければならない旨を規定しているのであるから食糧管理法が公共の福祉の為に必要であるとして所論のような主要食糧の移動までも制限しその制限に反する所為を処罰する趣旨の規定を設けているからといって同法を目して憲法一三条に違反するといえないこともまた当裁判所の判例の趣旨とするところである。論旨はそれ故理由がない。そして本件では刑訴四一一条を適用すべきものとも認められない。

同第二点について。

しかし、所論の施行法の規定にいわゆる前条の事件とは犯罪の行われた時が新刑訴法施行の前であると後であるとを問わずいやしくも新刑訴法施行の際にまだ公訴の提起されていないすべての事件を指す義と解すべきことは文詞からも条理からも明らかなところであって、同条の規定が新刑訴法を施行することに関して定められたものであるからといって、所論のように犯罪が新刑訴法の施行後に行われた場合の事件の審判にはその適用がないと、解すべき理由はない。されば第一審裁判所が被告人から弁護人の選任を辞退したので所論施行法規定に従って弁護人なくして開廷し本件を審判したからといって違法であるとはいえない。それ故論旨はその前提において明らかに刑訴四〇五條に定める事由にあたらないし、また、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

被告人の上告趣意書は期間後の提出にかかるものであるから説明を興えない。 よって刑訴四〇八条同一八一条一項に従ひ裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 穂積重遠)

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